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2016.09.08 | BLOG

朝日

去年ですけれど、はじめて軽井沢へ行きました。
雑多な観光地みたいなイメージをもっていたんですが大間違い、美しいところでした。
夏はとうに過ぎていましたがちょうど紅葉の季節でした。

到着した日に軽く散策してまわったところ、「旧軽」と呼ばれるエリアに「SAWAMURA」というひときわ人でごった返しているレストランを見かけました。その日はすでにお蕎麦を食べたばかりで満腹でしたから、翌日、朝食を求めて行ってみました。街や道路はすいている方がいいけど、食事をするなら混んでいるお店がいいと思いませんか?

お店の中は今まさにパンの焼きあがる空気で満ちています。
深煎りのコーヒーとホットサンドとフレンチトーストをオーダーしました。
冷え込んではいるものの快晴です。
わたしたち以外にお客さんもいなかったので店内を見てまわり、青空と紅葉がよく見えるテラスに面した窓際席に決めました。

食べたパンの写真

空気はしんとして、まだ斜めに差しこんでくる朝日が店内の木製の床とテーブルとを一面金色に照らしています。金色の光と床に落ちる陰影とのコントラスト加減がドラマチックで。『あしたのジョー』の最期のシーンくらいドラマチックで。といったら言い過ぎですけど。けど、コントラストのはっきりしたものに視覚を刺激されると、どこか「ぱちん」とリセットされるような、そんな感覚ってありますよね?

とにかくその奇跡のようなロケーションをひとり占めで、しばしの時間を過ごすことができました。
いうまでもなくパンは味わい深いものだったし、コーヒーも淹れたてをいただきました。

こうして軽井沢にたどり着くまでは、実はかなりバタバタだったのです。特に出発の前日などは本当にツイてない一日でした。打ち合わせやら、作品発送やら、もうひとつ打ち合わせやら、納品やらオープニングパーティーやら。おまけにこの日の昼に集荷に来る予定だった運送屋さんが来なかった。翌朝にはわたし飛行機に乗る予定でしたから、泣く泣く、夜のオープニングパーティーは乾杯直後に退席。(あぁ、パーティーのお料理一口も食べられなかった!)そんな調子で、そんな擦り減ったキモチと体を引きずりつつだったんですが、がんばって良かった。
まるでサプライズみたいな時間をもらえたと思わさった瞬間でした。サプライズ朝日。パラダイス銀河ってありましたね。関係ないか。

そういえば、前に生徒さんから聞いたんですけども「センセ知ってます?神様ってのはね、いないんですってよ」とのこと。
知らなかった・・・。では、サプライズみたいに素晴らしくお天気が良かった時はですよ、誰にお礼言ったらいいんでしょうかね?誰か知ってる?

 

 

 

 

 

 

2016.09.07 | BLOG

におい

このあいだの個展のとき、在廊の合間にいくつか美術館へ行きました。

恵比寿の美術館へ行った日、帰りに雨に見舞われたときのこと。その時はもう駅には近かったんだけども、あまりにもひどい降りだったので近くのカフェへ一時避難することにしました。

ランチタイムもそろそろ終わるくらいの時間帯なのに店内にはお客さんがたくさんいました。ソファ席もあり、寛げる雰囲気のお店です。一見して女性客が多く、そのビジュアルに相応しくふわ~っと(でも主張の強い)メープルシロップやバターの香りに迎え入れられます。

街の写真

ソファ席は一杯だったので入り口近くのテーブル席へ。手渡されたメニューをざっと見て、隣の席の女子2人が食べていたリコッタチーズのパンケーキも横目に見ながら、わたしはタコスが乗っかった具だくさんのサラダっぽいご飯(料理の名前は忘れてしまいました)と食後にアイスコーヒーをオーダーしました。

窓の外の雨足の具合をみながらタコスが乗っかった具だくさんのサラダっぽいご飯をわたしが平らげている間も、同じように後から後から、びしょびしょの傘やカバンを持って入ってくるお客さんがありました。近くのオフィスからテイクアウトのために来るサラリーマン風の人とか、待ち合わせに遅れながらもようやくたどり着いた風の人とか。

雨に濡れたその人たちが入り口から入ってくるたび、むんとするような雨の匂いがまとわりつくように入ってくる。都会だろうが田舎だろうが雨は雨の匂いがしますね。その度に店の中の空気はリコッタパンケーキの甘い匂いと夏の雨の匂いが一瞬、突然混じり合う。
それでその一瞬の間、なにかすごーく遠い記憶の中の何かがひょっこり顔を出しそうになるんだけど、すぐにシロップや何かの匂いがそれを遮ってしまう。まだちょっとも出ていないのに被せ気味にポコン!と頭を叩かれるモグラたたきのモグラみたいな感じで。
もどかしい。
うーん、なんだったかなぁ。

店を出てから、雨の中を漕いでいく気になれず、その次に行こうと思っていた美術館へ移動するのはやめてアトレの中の書店へ。雨とくりゃ本でしょ、というのは田舎育ちだからです。たぶん。
最近の書店はかゆいとこに手が届いてますね。レジのすぐ横にカフェコーナーがあったりするのが、もう珍しくない。それとも、ずっと前からそうだったのか。それはともかくそのお店も、もう夕飯時の時間帯だというのに混んでる。みんな雨から避難してここに陣取ってるのかなぁ。

袋に入った雑誌を片手に今度はホットコーヒーを買ったところで、思い出した。思い出した!

中学生のころ、友達と近くの街の遊園地へ遊びに行く計画を立てていたんだけど、その約束の当日、朝から雨だった。
けっこうなひどい雨なのに、やめておけばいいのに、楽しみにしてた約束だったものだから行ったんです。そして2人とも夕方には足元からなにからびっしょびしょになって、帰りのバスまでの待ち時間は、近くの大型スーパーのフードコートで暖をとるハメになった。「やっぱり雨降ったね。」「そうだね。」

その時の、店内の甘い匂いと衣服にまとわりつく雨の匂いがどうもミスマッチだったというだけの、愉快でも不快でもない、特にこれといった思い出ですらない記憶の断片でした。

匂いって、かなり昔のどうでもいい記憶にまでアクセスするもんなんだなぁ。それとも、雨の日だと心が退屈さに耐えかねてそういうそう動きをするんだろうか?そういうのありませんか?
でも、うん、思い出してすっきりした・・・

・・・。

えーと、でもちょっと待って。あの時代にパンケーキはなかったはず。
それにその時のお店って、たしかドムドムバーガーだった(!)
では、あの甘い匂いの記憶の正体は一体?
うーん、なんだったかなぁ。

 

 

 

 

 

 

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